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刻字・制作理念について
以前、友人からメールにて刻字についての質問を受けました。
メールの内容は、 刻字「暢神」を観た感想、 刻字とはどういうものか、 書作品の題材をどのように扱っているか、 ということでした。
ここでは回答のメールの内容を一部修正して紹介します。
刻字についての説明、あるいは制作理念についての説明として、
ざっくばらんな答えかたをしていますが、 制作の一端を知っていただきたく、あえて紹介することにしました。
友人宛に送信したメールを、一部を省略して掲載します。
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「暢神」はオーソドックスな作風にしたよ。 緑青(緑色)に金箔だと華やかで威厳のある現代的な作風に見えるし、 群青(青色)あるいは黒にプラチナ箔だとシャープで都会的な作風に見えるけど、 そういう色味は飾る空間が限られるから、 どこにでも飾ることができるように茶色と金箔にしたよ。
制作過程において、一番重要なのは文字(書)が書けること。 文字を書く技術が足りないと、いい刻字作品を作れないよ。 なぜなら、刻字するということは、板に文字を浮かび上がらせる、 あるいは板に文字を彫り込むことだから。 完成した刻字作品は、結局は「書」を鑑賞することになるからね。
もちろん彫りの技術も大切だよ。 下手な文字を高度な技術で彫ってもいい作品にはならないし、 うまい文字を板の裂け(割れ)やササクレだらけの稚拙な技術で彫っても いい作品にはならないしね。 細かいカスレや細い線でもピシャリと彫る技術が大切。
絵具は基本的に「岩絵具」という絵具を使うよ。白色は「胡粉」だよ。 岩絵具は粉状だけど、これを液体状にして綺麗な発色で塗るのは 何度かやって慣れれば誰にでもできるようになるよ。
金箔や銀箔、プラチナ箔をうまく貼った作品は、板の年輪が浮き上がって見えるよ。 箔の作品を野暮ったく見せないためには、年輪をシャープに引き立たせることが大切。 作品効果を狙って、あえて年輪を隠すこともあるけどね。
刻字作品は、 文字(書)の完成度が高いことは必須の条件で、彫りの技術が見所だよ。 鮮やかな彫り跡がないと、書を彫った作品としてはイマイチだと思う。 「鮮やかな彫り跡から感じる勢い」が「紙の書道の線の勢い」に リンクするのが刻字作品の醍醐味だと思う。 彩色は作品効果を高めるためにベストな色味を選べばいいと思う。
(中略)
(作品の題材となる)熟語などは、その背後の意味が現代でもなるほどと 頷けること、漢詩や和歌の場合は現代の人が読んでも情景が浮かんで感興を 共有できることが、選文(言葉を選ぶこと)のメインになってるよ。
(中略)
例えば「飛」をひらひらと飛んでる感じで書くとか、 「童謡」を子供が書いたような感じで書くとかの発想が浮かんだとしても、
それを表現の意図にするのは書の本質ではないと思う。
そういう表面的な発想に傾きすぎず、 文字に籠るエネルギーというか発散するオーラというか、 そういうものが言葉の意味に通じていることが大切だと思うよ。
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