書家 山本祐司 −正統と品格 清新な雅趣の創造− 本文へジャンプ

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2006年掲載

素晴らしい楷書

 

中国の科挙(官吏登用試験)では、文字がうまく書けなければ落第だったようです。
その文字は実に美しく整った楷書で「館閣体」や「院体」と言われています。

文字が下手だから落第!という発想は、現在では考えられないですね。

いくら点数が良くても、字が下手だから不採用、という時代があったのです。

今の日本は、公務員試験でも、入社試験でも、政治家の選挙でも、

字が下手でも普通に合格しますね。現代、セレブや名士と言われる人でも

書に対する素養のある人はだんだんと少なくなっていくような気がします。


美術館や博物館で、科挙に関する資料の展示があれば、ぜひ足をお運びください。
運がよければ美しい館閣体を目にすることができると思います。
科挙の試験で使ったカンニングペーパーも見たことがありますが、
並々ならぬ努力に敬服しました。

館閣体に話を戻します。

さきほど「館閣体」は実に美しいと書きましたが、一般的には書としての
美術的価値はあまり評価されていません。

館閣体はあまりにも整いすぎて、味わいがないと評されています。
しかし私は素晴らしい館閣体の文字を書くことができることは
素晴らしい技量だと思います。

書道関係の出版物で「楷書ノウハウ」のようなものはたくさんありますが、
「館閣体ノウハウ」は見かけませんね。

巷に溢れる「楷書ノウハウ」には、館閣体のような文字の参考に
なるものはあまりありません。
ただし、奈良時代に書かれた写経、通称は天平写経ですが、
この天平写経には目を見張るものもありますので、ご覧いただきたいと思います。

「館閣体」や「院体」という言葉を覚えておいて、
中国の科挙や官吏などの展示を見る機会があれば思い出してください。
きっと誰もが認める素晴らしい楷書であると信じています。